このキヤノン製ジャンクレンズはズームリングが50mmくらいの位置からWIDE側に回りません。内部で何かが引っかかってロックされている感じです。たぶん落下させたか、ぶつけたか?して内部のプラスチック部品が破損していると想像されます。外観と光学系はキレイだし、運が良ければ修理可能かも知れないと思い500円で購入しました。
↓マウント側から分解してみるとエンコーダのブラシ(熊手のような部品)が脱落して鏡胴内に挟まっておりました。
↓円形の基板を外してみると、アルミダイキャストに熊手が付いたような部品が出てきました。本来であればこのブラシは鏡胴内周に貼ってあるズームエンコーダフレキ基板上を摺動してズーム位置情報を検出する役目をします。
↓折れて残ったアルミダイキャストが写真中央にあるグレーの四角い部品で2本のネジで鏡胴に取り付けられています。
↓スームリングのラバーをめくり、少しずつズラして鏡胴表面を出します。そして小さい2本のネジを取ります。
↓折れてしまったアルミダイキャストをどの様に直そうか?。まず使い慣れたボンド ホーロー補修用を試してみます。
↓硬化まで24時間と説明されておりますので、洗濯ハサミで圧着したまま待ちました。このボンドでイケそうです。
↓上記の部品に接触しているプラスチック部品にもダメージがありました。ゼリー状瞬間接着剤で肉盛りをします。
↓翌日、ボンドが硬化しました。鏡胴内他部品との接触を避けるためのヤスリ切削後も肉厚が残っており、安心です。
↓元通りに取り付けて完了しました。ズーム位置検出エンコーダはこんな様子で左右方向にスライド動作します。ブラシ(熊手)のバネ圧が折れた箇所の負荷になりますが、強度は足りています。そしてレンズ全体を組み立てました。
↓カメラで実写テストをしました。ズームもAFも正しく動作しました。画面中央は問題ありませんが周辺(四隅)がこの写真のようにボケてしまいます。(18mmワイド端・絞り解放、写真左上の隅を800X600ピクセル等倍切り出し)
↓再度分解して調べてみたら、後玉ユニットを支えている3か所のアームの1か所(赤枠)が破損して無くなっています。アームは2か所だけでも動作しますが、後玉ユニットの自重でグラツキがあり光軸ズレが発生してました。
↓後玉ユニットの自重分だけ支える事ができれば解決できそうです。使えそうな板バネを加工してアームを自作してみました。試行錯誤すること2~3日、写真左のアームと小さなネジの組み合わせで取り付けしてみます。
↓破損した箇所にピンバイスで1mmの穴をあけて1.2mmのネジで自作アームを取り付けました。このアームはズームリングを回すと後玉ユニットと一緒にピストン移動する構造です。後でツヤなし黒色塗料を塗って目立たなくしました。
↓修理後の写真左上です。(条件は修理前と同じ)ちゃんと直っているー。左下、右上、右下もこんな程度です。
↓参考まで:修理後の写真中央です。(条件は修理前と同じ)被写体は建物のタイル壁面で、距離は2mくらい。
エンコーダブラシのアルミダイキャスト接着はそれほど苦労せずに済みましたが、アームの破損・欠品が見つかった時は「これは修理絶対ムリ!」と思いました。破損部分が鏡胴内に残っていれば良かったのですが、何も無い状態から同じ機能の部品を作成しなければなりません。しかも取り付ける場所の幅は2mmくらいで、サイズオーバーすると他の鏡胴に当たって動かなくなります。
今回使った部品は、以前に分解してバラバラ単品になっていたフィルムEOS Kissのどこか?の金属片なのですが薄い板スプリング状で強度的にちょうど良く、加工して使用できました。
既にこのレンズは1本持っていたので今回で2本になりました。テスト撮影で比較しても動作系と光学系に関する差異は感じなく、500円ジャンク品からちゃんと正常なレンズに仕上がりました。