EF22-55mm F4-5.6 USMを分解クリーニング

このキヤノンレンズは1998年に単体30,000円で販売されていたようですが、APS一眼レフカメラEOS IX50用のキットレンズとして市場に出たのが多いと思います。35mmフルサイズEFマウントにも対応し22mm超広角として撮影することが出来ます。カメラ屋さん店頭に自分のフィルム一眼レフカメラKissを持ち込んで実際に動作確認してみました。AFは正常でしたがレンズ内部にクモリがありました。ネット情報でクモリをクリーニングした実践記事を見て興味が湧き、ジャンクとしては高価に思いましたが1,628円で買いました。

1480円


↓レンズは9群9枚の構成で、超広角らしい前玉の出っ張りと全長の短いスタイルがイイです。スームリングの感触は全域でトルクにムラが無く軽くスムーズに動いてくれます。
外観とレンズ構成


↓問題のクモリは前玉側から強い光を当てて後玉から覗くと「つぶつぶ」状が全体にありました。中間玉4群4枚の中と思われますのでネット情報を参考に分解クリーニングを試みます。
中間玉を分解する手順では前玉を外す必要は無いのですが、もし前玉裏のクリーニングも実施するのであれば前玉側面のネジ3本を取ると外れます。
クモリ


↓マウント側のカバーは取らなくても分解作業はできますが、隙間にフルーツナイフの先を差し込んで外してみました。こんな内部の様子を確認してからカバーを元通りに取り付けました。
マウント面


↓分解手順の最初はマウント側鏡胴のカバーを取る事から始まります。マウント面の隙間に指のツメをかけて強く剝がして行けば、このように外れます。残った両面テープは指先で強く転がすように根気よく続けるとキレイに取ることが出来ました。又は剝がさずにそのまま再使用も可能と思われます。
両面テープ


↓基板から絞りユニットに繋がっている黄色のフレキケーブルがあります。単純にコネクターに差し込んであるだけですがキツいので細いラジオペンチの先で持ち上げて抜きました。
フレキ


↓ズームリングのラバーを前玉方向にズラすと3箇所にネジと金色カラーが見えるので取ります。分解前にズームリング・フォーカスリングの位置をマーキングするか、テープで止めるかしておいた方が元に戻す時に安心です。
ズームリング


↓鏡胴を前後に軽く抜くように引っ張ると、このように分離します。後玉側の金具2本が鏡胴に刺さっている構造です。
鏡胴


↓鏡胴から後玉ユニットが分離しました。基板とAF機構は後玉ユニットに付いてます。次に鏡胴側に付いているズームエンコーダのブラシ(金属製の熊手みたい)はネジを取って外します。
分離


↓この中間玉ユニットは指で摘まんで引き出すだけで3本の螺旋レールから回転しながら抜けて来ます。元に戻す時の合う位置は1箇所だけなので迷う心配はありません。中間玉ユニットには絞り機構が含まれてます。
中間玉


↓中間玉ユニットを前側から見ると3本の黒いネジがあります。これを取ると前後に分離させる事ができます。
中間玉2


↓ネジを取り分離しました。後側には3枚のレンズが組み込まれており、前側には1枚のレンズと絞り機構があります。
中間玉3


↓左側3枚のレンズは一体構造なので前端面と後端面をクリーニングしました。右側の絞り機構のレンズは1枚なので前面・後面をクリーニングしました。程度差はありますが、どのレンズ面にも「つぶつぶ」状のクモリが付いていました。
中間玉4


↓一体構造の3枚レンズ内部にも「つぶつぶ」クモリの一部が残っており、全部キレイにしたいのですが分解不可の構造です。あきらめてレンズ全体を組み立て、実写テストでの画像は最初よりもクモリが減少している事を感じました。
クモリ2


↓それから1週間後「何とか全部キレイにならないか」との思いで再度分解しました。一体構造の前面内側にクモリが有る様です。レンズを壊す覚悟で鏡胴プラスチックを削ってみる事にしました。
カット


↓カッターナイフ以外に彫刻刀とマイナスドライバーを使用して、ここまで削るとレンズの境目が出てきました。境目の隙間にマイナスドライバーを差し込んで恐る恐る起こしてみるとレンズが持ち上がって外れてきました。
このレンズの後面にクモリがありました。これで後玉ユニット4枚8面のうち6面のクリーニングが出来ました。分解してない残り2面にクモリは感じないので終了とします。
このレンズを元に戻す時は指で強く押し込むと「パチッ」と入りました。削って無くなったプラスチック部分にはエポキシボンドを盛って仕上げました。
レンズ外し


↓それと、2枚構成の後玉にも問題があるのです。前側から強い光をナナメに当てるとこの様に無数のキズらしき模様が目立ちます。中心も外周も均一なのでキズではなくプラスチックモールドレンズ(たぶん?)の経年劣化による変質に感じられます。これはクモリと違ってクリーニングする訳には行かず、処置不能であきらめるしかありません。後玉


↓レンズを組み立て実写テストを繰り返している中で、時々AFが動作しない事に気付きました。何の情報も知識もないままマウント面のカバーを外して半固定ボリュームを調整してみました。
両方のボリュームを少しづつ回して実写を繰り返し、左側の半固定ボリュームを反時計回りに10度くらい回した位置でAFが安定動作してます。
半固定VR


↓この写真2枚はレンズクリーニング「前」と「8日後」の比較で、それなりにクリアな画像に改善されました。
画面に電球光源を入れてフレアーが分かりやすく表現したつもりです。
DATA:ワイド端22mm・絞り解放F4、カメラはEOS Kiss Digital Xで焦点距離は1.6倍の約35mm相当になります。
クリーニング前

クリーニング後

一連のメンテナンス作業と実写テストを終了後、自分としてのレンズ評価は次のような感じです。

××後玉のキズ?変質?があるのでシャープな画質は得られなくソフトフォーカスレンズの様な写り。
×逆光に弱くフレアーを感じる。
×ズーム望遠側の解像度が著しく悪く、絞っても良くならない。
××ズーム全域で左側が片ボケ。

〇解像度の悪さが、逆に軟らかくて優しい写りになる。
◎軽くて全長59mmのコンパクトサイズ
〇ズームリングの回転触感がスムーズ
〇絞り機構から出ているフレキケーブルのストレス断線が起きにくそうで安心できる。
〇ズームレンズの中で、比較的に構造が単純で分解・組み立て作業が楽にできる。


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